月の下で本を読む

気の向くままに、読書記録。

『鉱石倶楽部』長野まゆみ

 あらすじ 

鉱石倶楽部 (文春文庫)

鉱石倶楽部 (文春文庫)

  • 作者:長野 まゆみ
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2005/02/10
  • メディア: 文庫
 

放課後の理科室で古びた図鑑を見つけた少年は、不思議な夜間学級に出席する―ファンタジー短篇「ゾロ博士の鉱物図鑑」を収録。紫水晶、白雲母、月長石など数々の鉱石から生まれた物語は、葡萄狩り、天体観測、寝台特急と場面を変えながら美しく煌いている。著者秘蔵の鉱石写真やショップ案内も充実したコンパクト決定版。  内容(「BOOK」データベースより)

出版社 ‏ : 文藝春秋 発売日 ‏ : 2005/2/10 文庫 ‏ : 172ページ
ISBN-10 ‏ : 4167679302 ISBN-13 ‏ : 978-4167679309

 

感想

私がいつ長野まゆみに出会ったのか覚えていない。中学生か、高校生か。ただ初めて出会ったのは学校の図書館だったことは確か。そのとき手にした本が『鉱石倶楽部』。文庫版になる前のもの。

読んでみて衝撃。なんじゃこの日本語と世界観は! 感受性高いオタクが多感な時期に出会ってしまったのだから、私が長野まゆみワールドの虜になるのは避けられなかった。

近くの本屋には同じ本は売っていなくて、図書館で読むだけしかできなくて。大人になってから新装版が発売されているのを見かけて、大喜びで購入。新装版は文庫サイズで写真も綺麗で、一生の宝物になる本のひとつ。

 

『鉱石倶楽部』だけではなく、長野まゆみの作品の日本語の美しさと面白さに魅了される人が多いと思う。

燈【あかり】、筆記帳【ノォト】、麺麭【パン】、敷布【シィツ】、テレヴィ塔、などなど。私は曹達水【ソォダすい】という言葉を始めて知ったときはどれだけときめいたことか。

今の日常では使わない漢字や言葉をたくさん長野まゆみ作品で覚えた。大人になった今でもそうした言葉たちにときめきまくりなのは、オタクのまま育っているのもあるけど日本語の美しさが大好きなんだと思う。

 

『鉱石倶楽部』は鉱石を食べ物や薬とした架空の設定で、詩的なミニストーリー群。後半は猫族の店主が営むお菓子屋さんのお話も。

紫水晶は葡萄露という果実。そのまま食べても良いし、発酵させると果実酒に。私は初めて読んだ時に架空の設定だと気づかずに信じてしまった。鉱石って美味しいんだと目を輝かせたなぁ。なんて単純! すぐに創作であることには気づいたけれど、そのくらい美味しそうな表現で。

そこらにあるものを設定づけて遊ぶ、まるで無邪気な子どもたちのような物語群。ほんとうに発想が素晴らしい。どこかで誰かが評していた「夢のある嘘」という言葉がとてもぴったり。

 

長野まゆみ作品を読んだことがない人が一番最初に手を取るのに、『鉱石倶楽部』はありだと私は思います。長野まゆみワールドをしっかり楽しみたいのであれば『野ばら』や『天体議会』もおすすめだけれど、長野まゆみの言葉に触れるという意味では短編の集まりは読みやすいから。

現実的な思考はしないで、空想の世界をとにかく楽しんで欲しい。子どもも大人も、全力で想像力をかき立てられて欲しい。鉱石に興味がなくても問題なし。写真と物語で、こんな味なのかなと想像するだけで楽しい。

 

影響を受けたので、私の部屋にも学生時代に東急ハンズで買ってきた紫色の蛍石がある。鉱石は魅力的だけど、自然界のパワーに酔いやすいので石をたくさん集めれなくてハマる程は買えなかった。

それでも10年以上私の部屋の隅で置かれたままの蛍石。きっとそろそろ熟してしてきるだろうな。

鉱石倶楽部によれば、蛍石は煮だして葛粉を混ぜてジュレにするといいらしい。紫色の蛍石だからグレェプ味でしょう。それならちょっとリキュールを混ぜて、大人が楽しめるジュレにしたらいいかも。暑い夏の夜に、冷蔵庫で冷やしたグレェプ味の洋酒入り蛍石ジュレ。想像するだけでよだれがでてくる。

 

(2021年8月30日加筆修正)